こんにちは、2級ファイナンシャルプランニング技能士のオットです。
事業に必要なものをまとめて仕入れたとき、「自分でも一部使ってるけど、これって全部経費にして大丈夫なのかな?」と疑問に思ったことはありませんか?
とくに、小売業や飲食業など「仕入れたものの一部を自分でも使う」場面がある業種では、事業用と私用を完全に分けるのが難しいことがあります。
そういったときに必要になるのが 「家事消費」 です。
この記事では、家事消費の基本的な考え方や必要になるケース、家事按分との違い、申告時の注意点までわかりやすく解説します。
家事消費とは?
家事消費とは、事業で仕入れたもののうち、自分がプライベートで使った分の金額を、売上として加算する処理のことです。
簡単に言うと、「この仕入れのうち一部は私用で使いました。その分は売上として処理しておきますね」という申告の方法です。
家事消費の考え方
- 本来、プライベートで使ったものは経費にできない
- でも、業務と私用が混在しているとき、私用分だけを売上として戻すことで、課税対象額の整合性がとれる
- つまり、税務署に対して「正しく納税していること」を示すための調整手段です
家事消費が関係するのはどんな業種?
家事消費が特に関係するのは、以下のような業種です:
飲食業
- 飲食店で仕入れた食材の一部を、自分や家族の「まかない」で消費する
- まかないと販売用を明確に分けるのが難しい
小売業
- 店舗で販売する服や雑貨を、自分や家族も着用・使用する
- 商品と自家使用品の仕入れを完全に分けるのは非現実的
こういった場合、すべてを経費としてしまうと私用分まで含まれてしまい、結果的に過剰な経費計上となり、税務署から指摘されるリスクが高まります。
家事按分との違いは?
家事消費と似た言葉で家事按分というものがあります。家事按分については、以下の記事に詳しくまとめているため、そちらをご覧ください。
ここでは似て非なる家事消費と家事按分の違いを簡単に解説します。以下の表をご覧ください。
項目 | 家事消費 | 家事按分 |
対象 | 事業用の支出の一部を私用で使った場合 | 私用の支出の一部を事業で使った場合 |
処理 | 私用分を売上として加算 | 事業分を経費として加算 |
目的 | 過剰な経費を防ぐ | 課税所得を適切に減らす |
どちらも「プライベートと仕事の境界があいまいな支出」を正しく処理するための手段ですが、家事按分は経費を増やす調整であり、家事消費は売上を増やす調整である、という違いがあります。
つまり家事按分は経費を増やし、適切な範囲内で納める税金を減らす方法であるのに対し、家事消費は売上を増やし、適切な金額の税金を納める(納める税金が増える)方法と言えます。
家事消費はなぜ必要?
先に触れたように、家事消費は過剰な経費計上を防ぐためのものです。
乱暴な言い方をすると、知識がなく雑な経費の管理をしている場合(何でもかんでも経費にしている場合)と比べて、納める税金を増やすことになります。
納める税金は極力少なくしたいと考える人も多いと思いますので、家事消費をして納税額を増やすようなことはしたくないと思う人の方が多いかもしれません。
しかし、これは最終的に納める税金を増やさないために必要な行動になります。
本来家事消費が発生する事業所が、家事消費なしで、仕入を全て経費に計上していた場合、
売上の過少 & 経費の過剰
とみなされ税務署からの指摘対象になりやすくなります。
そこで、家事消費がないことを指摘されると、税金の追加徴収が発生します。
追徴される税金例
① 不足分の税金(本来の所得税、住民税)
② 過少申告加算税(原則10%加算、悪質なら15%加算)
③ 延滞税(支払期限から遅れた日数に応じて加算)
※故意ではなく、ミスによるものであれば多少考慮してもらえる場合もあるが、これらが発生すると考えた方が良い。
上記のうち、②、③は適切に処理をしていれば発生しなかった余計な税金です。ちなみに②、③で大体25%前後になることが多いようです。
納める税金を極力少なくしたい場合、このような余計な税金を支払わないための適切な処理と、適切な金額の納税が必須となります。
つまり過剰に税金を納めないために家事消費は必要な処理と言えます。
特に青色申告事業者は要注意!
家事消費はどの事業者、個人事業主にも関係することですが、特に青色申告事業者は気をつけましょう。
青色申告では、収入・経費・売上原価などを詳細に記帳し、確定申告で提出します。
つまり家事消費の有無が税務署で確認できるということです。
飲食業や小売業などで「仕入れが多いのに家事消費が一切ない」となると、「プライベートでも使ってる分があるのでは?」と税務署に疑われる可能性が出てきます。
とくに以下に該当する方は、家事消費を計上することを強くおすすめします:
- 自分や従業員が仕入れた食材を日常的にまかないとして食べている
- 販売用の商品を自分でも使うことがある(例:衣料品、雑貨など)
家事消費の計算方法と処理例
明確な基準はありませんが、常識的な範囲での概算額を算出し、「家事消費」として売上に加えます。
処理の一例(仕訳例)
たとえば、年間の仕入れのうち、私用として使ったであろう金額が10万円だった場合:
(仕訳)
事業主貸 100,000 / 売上 100,000
こうすることで、私用分が経費から除かれ、課税所得の調整が行われます。
家事消費の注意点
✅ 見積もり根拠は記録しておくこと → たとえば「月に2〜3回、家族でまかないとして消費」などのメモがあると安心。
✅ 不自然に少なすぎる金額はNG → 家事消費すべき業種で「0円」は逆に不自然です。
✅ 家事消費は毎年同じにしなくてもよいが、明確な理由が必要 → 前年と大きく変わると、税務署に説明を求められる可能性があります。
まとめ
✔ 家事消費とは、「仕入れたけど私用で使った分」を売上として加算する処理のこと
✔ 小売業や飲食業など、私用と業務の区別がつきにくい業種で特に重要
✔ 家事按分との違いは、「経費を増やすか」「売上を増やすか」
✔ 家事消費をきちんと売上に加算しないと、余分に税金を納めなければいけないリスクがある
✔ 青色申告者は特に注意!仕入れが多いのに家事消費ゼロは危険
✔ 概算でOK。ただし記録と根拠は残しておこう!
「仕入れたもの全部経費でOK!」ではありません。場合によっては税務署からの調査が入り、追加で税金を徴収される場合もあります。
でも、事業としてしっかり説明できる処理をしていれば、税務署に聞かれても怖くありません。家事按分とあわせて、家事消費の考え方もしっかり押さえておきましょう!そして、記事を参考に、正しく処理を行いましょう。
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ではでは。。。
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